教師と医師 〜「診断」と「処方」〜 不登校という事実から考える
教師と医師は似ている部分があるなぁと思います。
そもそも「教師五者論」という考え方があって、その5者の中に「医者」が入っているように、教師も医師と同様の要素を持ち合わせていたいと言われています。
教師(講師)五者論とは 〜親がこれなら子はぐんぐん育つ〜
先日、ある校長先生からこのお話をお伺いし、「あぁ私も社会人になったばかりのころ、この話を聞いたなぁ」と懐かしく思い、また身が引き締まる思いでした。そして、改め…
先に述べておきますが、私は医師免許を持っているわけでも、お医者さんに聞いたわけでもないので、間違っている部分があればそれは事前に謝っておきます。ただ、庶民感覚でわかりやすく説明させていただきますのでご了承ください。
医師の「診断」と「処方」
医師は、患者さんが来たときに、まずその症状から「診断」をしなければなりません。
例えば「鼻水が出ます」という症状を患者さんが訴えたとします。
あなたが医師ならどういう「診断」をしますか?
「は〜い、風邪ですね〜」としますか?
それはあまりにも横暴ですね。
ヤブ医者ってやつでしょうか?
もしかしたら裏付けられたものがあるかもしれませんね。
「鼻水」という症状(事実)の他に何か症状がないか調べますよね。
「熱は出てませんか?」「咳はどうですか?」「他に痛むところはないですか?」と聞いてみる。
心音を聞いたり、喉を見たり・・・もし必要であれば血液検査をしたり、エコーで見たり・・・
社会情勢も当然加味しますね。インフルエンザが猛烈に流行っている、花粉症シーズンだ・・・
これらを組み合わせて初めて「風邪」「花粉症」「○○病」なんていう診断を出します。
時には診断が出ずに、もっと詳しい検査を勧められることもあります。
「診断」が出ると、その病気にあった薬が「処方」されます。
その薬も強弱があったり、年齢に合ったものなど、個に合わせたものが処方されるでしょう。
時にはその処方された薬が全く効かないなんてこともあるでしょう。
その時は、もしかして診断が間違っていたかもしれない、違う病気だったのかもしれないと診断をし直します。
当然処方される薬も違ってきます。
教師(親)の「診断」と「処方」〜不登校を例にして〜
教育でも医師と同様の「診断」と「処方」が必要になります。
例えば不登校を例にして考えてみましょう。
子供が学校に行きたがらない「不登校」という事実は、先に述べた医師の例と比べるとそれは「鼻水が出る」という症状でしかありません。
ですから「不登校」という事実だけで、診断して処方するのはあまりにも横暴すぎます。
でも意外とそういう先生や親御さんが多いのも事実です。
「不登校」→「どうしたらいいですか!?」
「う〜ん、保健室登校してみましょうか?」
「頑張っていこうよ!」
これらの処方ははたして適切なのでしょうか。
たまたまその処方が当たることもあるでしょう。
でも、お医者さんに「とりあえず風邪薬だしておくね〜」と言われているような感じです。
ですから先生や親御さんは「不登校」という事実だけでなく、いろいろな診断をしなければなりません。
勉強はどうか?友達関係はどうか?クラスはどうか?先生はどうか?
行きたくないという日に何か規則性はあるか。
実は体育が嫌すぎて…とか、理科室の席がすごく苦手な子と隣で…とか
親に言えないけど習字セットの筆が実は無くなっていて…なんてことも。
図工の先生がすごく苦手で…なんてことも。
でも忘れてはいけないのは、原因が学校以外にある場合も多いのです。
親御さんはこれに目を向けるのは辛いかもしれませんが、正しい処方をするためには目を逸らしてはいけません。
例えば、弟妹が生まれた、離婚、親の不仲、祖父母と親の関係、兄弟が不登校、親御さんの仕事の変化などといった家族の影響を大人が思っているよりも敏感に影響を受けています。
それにより、親御さんと一緒にいたい気持ちが無意識に出て、親御さんの気を引きたくて、不登校なんてこともあります。
親や兄弟にきつく当たられていて、それだったら家が嫌で学校に行くでしょと考えたくなりますが、そうでもないんですね。
家庭環境が影響していることも多々あります。
寝る時間が遅くて朝起きられない。(うちの子はそれはないと思うんですけどね〜といった子が実は自分の部屋で隠れて夜な夜なゲームをやっていたなんてこともありました。)
ゲームやスマホ依存に近い状況になっている。
これは「ゲームがやりたい!だから学校に行きたくない!」という状況よりは、それによる2次的な影響のパターンのほうが多いように感じます。
先に述べた「寝不足」や、「意欲の低下」「学力不振による授業を受けたくない、授業が分からないからつまらない」などです。
WISCなどの検査を行なって子供たちの苦手分野を調べてみることもあります。
実は「聞く」ことが極端に苦手で、授業や生活での全体指示がほぼ分かっていなくて苦しんでいたなんてこともあります。
すごく敏感で騒々しい場所が苦手で、教室のざわざわが異常に苦手だということもあります。
こうやってありとあらゆる方法で「診断」をしていくのです。
するとはじめは「不登校」という事実でしかなかったものが、その背景や原因が少しずつ見えてきます。
ただ、なかなかその原因がはっきりしないものも多いのが現実ですが、この「診断」を全力で行うことが先生や親御さんにすべきことです。
なぜなら、その「診断」によって「処方」が変わってくるからです。
「教室の騒々しさが苦痛」であるならば「別室登校」という処方が適切ですが、「寝不足」であるならば「別室登校」を処方しても改善はしないでしょう。
親御さんが「保健室でいいからいきなさい」と行かせても不登校が改善しないことがあります。
それどころか「保健室登校」→「学習が遅れる」→「不登校」となってしまって初めの処方ミスがより不登校を深刻化させることさえあります。
「学習不振による不登校」であれば「塾」という処方。
「寝不足」であれば「睡眠改善」という処方。
という実は簡単な薬で改善するかもしれません。
「学校が原因で不登校」もあるし、「家庭が原因で不登校」もあります。
「先生が原因で不登校」もあるし、辛いですが「親が原因で不登校」もあります。
親御さんがそれを受け止めたり考えたりするのは辛いですが、それができて本物の子育てです。
子供のためにそれの選択肢をもつことは必須です。