体を動かすことを純粋に楽しむ
医者に言われた。「健康のためにウォーキングをしなさい」
友達に太ったねと言われた。「ダイエットのためにランニングをしようかな」
息子に言った。「サッカーが上手くなるために自主練習をしなさい」
これ、なかなか長続きしないんですよね。
運動を習慣化することはすごく重要なことです。
でも子どもの運動離れは深刻で、当然それに伴い運動能力は低下しています。
ちょっと運動したくらいで成果は出ません。
でも、ちょっとの運動(運動遊び)を習慣化していくことが極めて重要です。
あなたのお子様は、毎日体を動かして遊んでいますか?
まさかゲームばかり、youtubeばかりではないですよね?
早稲田大学名誉教授の竹中先生が提唱している話がすごく分かりやすく、SOBU ACADEMYの理念ともすごく近いので紹介します。
毎日合計60分以上の運動を推奨
およそ10年ほど前、学校現場や子供を取り巻く環境の中では以下のようなことが話題に上がっていました。
身体的な問題:疲れやすく、じっと立っていられず、すぐに座りたがる。好奇心がなく、集中力が持続しない。
精神的な問題:気が散りやすく、無理と思ったらすぐに諦めてしまう。辛抱がない。
食事の問題:美味しいものが周囲にたくさんあるので、何を食べても美味しいと感じない。同じものばかり食べて満足している。
社会性の問題:空気が読めず、人との距離感が掴みにくい。
竹中教授らは、これらの問題を解決するひとつの手段として運動に着目し、体を動かすことを厭わない子どもを育てる“アクティブ・チャイルド 60 min.”という子どもの身体活動ガイドラインを発表しました。
ただ、これをやってもらう上で、非常に重要なことは、それを「続ける」「習慣化する」ということです。
継続しなければ成果は生まれないからです。
習慣化するためにはどうしたらいいのでしょうか。
それは、病気にならないため、体力をつけるため、スポーツができるようになるため、勉強にうちこめるようになるためなどという
○○のためという目標・目的指向をやめることです。
プレイフルネスとは
「運動すれば、このようなよいことがある」と言われても、体を動かすのが得意ならともかく、苦手だったりそれに割く時間がなかったりすれば、モチベーションは上がらず、習慣化しないのは当然だと思います。
走れば痩せる!と思っても、走るのが嫌いだと数日は頑張れても、長続きしませんよね。
そこで、是非とも知っておきたいのが“プレイフルネス”という考え方です。
“プレイ(運動・遊び)”自体をより楽しく面白い状況に変える、そのような環境を作り出す能力を意味します。
“何かのために運動する”のではなく、運動を行うこと自体に価値を置く考え方です。
サッカーの自主練習を毎日している息子の友達を見ると、「あぁうちの子も自主練やればいいのに」と思って、我が子に「あなたもサッカー上手くなるために自主練毎日したらどう?」と言っていませんか?
でも、きっと、その息子の友達は、サッカーがうまくなるために自主練習をしている訳ではないのです。
単純にサッカーすることが楽しいからサッカーしているだけなのです。
テレビゲームよりもサッカーが楽しいのです。
結果、どんどん上達していくという訳です。
もちろんその裏には、親御さんか指導者の方の上手な導きがあったからこそなのですが…。
プレイフルネスを満たす6つの要素

没頭・自己決定 〜やる気スイッチ〜
さまざまな運動・活動に“プレイフルネス”を満たす要素は6つあります。
最初の2つは、「没頭」「自己決定」です。
目的だとか、どうなりたいなどといった余計なことを考えずに没頭できること。
そして、人に言われてしょうがないからやっている感を持たない、つまり自分の意志で行っているという自己決定ができること。
私たちのスクール生も、伸びる子は、「自分の意志で取り組んだ子」です。
以前も話ましたが、①スクールできっかけを作る ②自分でやってみる ③できるようになる ④スクールに来て「できるようになったよ!」と報告
このパターンがとても多いです。
運動ができる子とできない子の違い
いわゆる“運動神経がいい”子と“運動神経がよくない”子の違いは何ですか?とかうちの子、運動ができるようにしたいんですけどどうしたらいいですか?とかこのような質問を…
最近は「縄跳び」を重点項目として取り組んでいますが
幼稚園の子は「先生、幼稚園の外遊びの時間に縄跳び練習しているんだ!」と嬉しそうに報告してくれます。
もちろん前回し跳びがどんどん上達しています。
小学生の子も、「あれ?先週2重跳び2回しか飛べなかったよなぁ」という子が15回も跳んでいるので聞いてみると
「昼休みに練習している」とか「体育の時に頑張っている」とか「家でやっている」とかいろいろな声が聞こえてきます。
結局、本人の意思「できるようになりたい!」という思いがあれば続けてやるのです。
だからこそ、「やりなさい」は価値が低く、「どれだけやる気にさせるか」が指導者の腕の見せ所なのです。
実はそれは簡単です。『価値づけ』です。
私のブログをよく見てくださっている方はピンとくるでしょう。
「有能感」ですよね。
有能感・ルール遵守・社会的関与・楽しさ
次の4つは有能感/ルール遵守/社会的関与/楽しさです。
自分が上手に動けるようになった、自信がついてきたという感覚・経験(有能感)が生まれなければ継続は難しいです。
だからこそ、私どものスクールでもこれは指導者が非常に重要視していることです。
「できるようにさせてあげること」ではなく、「できるようになったわずかな成長を見逃さず価値づけること」です。
それをフィードバックしてあげることで「私できてきたかも!」「もう少しでできるかも!」と思わせることができます。
また、他者とうまく遊ぶためのルールを守る(ルール遵守)ことによって他者への思いやり、協調性が育ち、友達や指導者、保護者との有効な関係作り(社会的関与)を学ぶことができます。
できる<楽しむ
私たちのスクールではできることはもちろん大切にしていますが、できることより楽しむことを大切にしています。
すごく矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、楽しむことを大切にした結果、自然とできることにつながっていくのです。
それが本物の「できる」だと思いますし、生涯にわたって運動に親しむ子が育ってくれると思っています。
「できるようになったけれども、もうやりたくない」は悲しいですし、本末転倒です。
私たちはスーパーキッズを育てたい訳ではありません。
生涯にわたって運動に親しむ子、その土台づくり、「運動」を使って育てられる社会性やコミュニケーション能力、認知機能など、そして自己肯定感…
結果、運動が得意だ!とか、中学や高校になって活躍できた!なんてなったらもちろんいいですが、それは副産物です。